ChatGPT、Claude、Gemini、copilot、Grokなどの技術競争が激化している生成AIは、今やあらゆるサービスで活用されているといっても過言ではないでしょう。SNSでは情報の最適化やファクトチェックなどで活用されており、業務効率化や自動化を可能にするAIエージェントが急速に普及しています。
ヘルプデスクも、生成AIの活用が進んでいるサービスのひとつです。問い合わせ対応の自動化、顧客満足度向上、対応履歴管理、多言語対応など、幅広い業務の効率化や応対品質向上に生成AIが用いられており、今後もAIと人間の連携や棲み分けが検討されていく見通しです。
生成AIの浸透によって、ヘルプデスクはどう変わるのでしょうか。今回は、ヘルプデスクの仕事内容と生成AIの活用の実態について紹介し、将来性についてもレポートします。
生成AIの現状
あらためて生成AIについて説明すると、「文章・画像・音声・音楽・動画などの新しいコンテンツを生み出す人工知能」となります。ディープラーニング(深層学習)によって大量のデータやパターンを蓄積し、条件やニーズに応じてオリジナルのコンテンツを自動的に生成します。
生成AIは、SNSの機能や業務ツールに加えて、教材作成、設計支援、仮説検証、デザインなど、さまざまな用途で活用されています。情報管理や業務課題解決のサポートとして社内で導入している企業も増えており、セキュリティ対策に関する知見も急速に高まっています。
現在、生成AIの市場規模は世界中で加速度的に拡大しており、2023年の670億ドルから2032年には1兆3,040億ドルに達する見通しです*。
ヘルプデスクの仕事内容
ヘルプデスクは、社内外からのIT関連の問い合わせに対応する業務です。ヘルプデスクには、自社社員を対象とした社内ヘルプデスクと、自社製品・サービスのユーザーを対象とした社外ヘルプデスクがあり、それぞれ仕事内容が異なります。
社外ヘルプデスク:顧客対応が中心。自社製品・サービスの問い合わせ対応やトラブルシューティングを行います。技術的な問い合わせ以外にも、クレーム対応や契約内容の確認などを行うこともあり、円滑なコミュニケーション力が問われます。
社内ヘルプデスク:従業員からのITに関する問い合わせを受け付けます。社内システムの操作方法の説明、エラー対応、アカウント管理などを行い、従業員がシステムやITツールを円滑に使用できるようサポートします。
ヘルプデスクでは電話やメール、チャットなどでの対応が基本ですが、ときには他部署へ取り次いだり、トラブルの調査を行ったりすることもあります。
ヘルプデスクにおける生成AIの活用
近年は高精度・高機能化によってシステムや機械の操作がより複雑になっており、ヘルプデスクの業務負担が増加しています。そこで、生成AIを使用したヘルプデスクの業務効率化が進んでいます。
チャットボットによる問い合わせの自動回答
自然言語処理(NLP:人間が日常的に使う言葉をコンピュータで処理する技術)を得意とする生成AIをチャットボットに組み込むと、問い合わせへの即時回答が可能となります。特に導入効果が高いのが「よくある質問(FAQ)」で、頻繁に来る問い合わせへの回答を自動化することでヘルプデスクの業務負担を大幅に軽減します。
従来のチャットボットは、事前に設定された質問に対する回答を、自動的に投げ返すものでした。しかし、生成AIはユーザーが自由に入力した質問を理解し、膨大なデータの中から最適な回答を生成することができます。会話の流れも自然で、まるで人間と会話するようなやり取りを行えるのが特徴です。また、24時間365日、いつでもユーザーの問い合わせに対応できるというメリットもあります。
問い合わせの一次対応
問い合わせの一次対応を生成AIに任せ、解決できない問題をヘルプデスクが引き継ぐという活用も増えています。単純な質問は生成AIが対応するので、ヘルプデスクはより複雑で緊急度の高い問い合わせに集中することが可能です。
たとえば、「パスワードを忘れた」という質問を受けた場合、生成AIがパスワード再発行の手順を伝えます。パスワード再発行を行ってもログインできない場合はヘルプデスクへつなぎ、原因の究明と解決方法を提案します。
今、大手企業を中心に、生成AIとヘルプデスクのハイブリッド対応が急速に広まっています。生成AIなら待ち時間が短縮されるため、顧客満足度の向上にも貢献します。
ナレッジベースの自動構築
ヘルプデスクが問い合わせに正確・迅速に対応するには、FAQや業務手順を体系的にまとめたナレッジベースの構築が不可欠です。このナレッジベースも、生成AIを使えば自動的に作成できます。たとえば、以下のような活用が可能です。
- チャットログの内容について、要点の抽出・分類
- マニュアルからFAQを自動作成
- 検索性を高めるためのタグ付け
生成AIは、大量の情報から必要な箇所を抽出し、自動で要約・構造化できます。労力をかけずに、短時間でナレッジベースを作り出すことが可能です。
ナレッジベースの構築は、ヘルプデスクの業務にとどまらず、人材育成や業務標準化にも役立ちます。業務の属人化を防ぎ、社内全体の効率化・質向上にも貢献するでしょう。
まとめ|ヘルプデスクの今後と将来性
生成AIの登場によって、ヘルプデスクの仕事が変わりつつあります。従来は人間がすべての問い合わせに対応していたのですが、シンプルな質問には生成AIが対応できるので、専門性が高いスタッフは重要度の高い質問に集中できるようになっています。
今後、ヘルプデスクの仕事は、ナレッジベースを活用した応対品質の向上や専門的な人材育成、ユーザーのリアルな声をもとにした販売プロセスの改善提案など、より主体的な活動へと移っていく可能性があります。
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